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いなかの猫の天邪鬼部屋

第35話

OnAir~シーズン2・第35話~


#IF.. 追いこみ撮影現場、安眠島

(モニターの前。ギョンミンとオソク、座っている。)

ギョンミン : 明日までに安眠島の撮影を仕上げるなら今日の3シーンは全部完成させないとならないぞ。(オソクを見る) 俳優はまだか?

オソク : 他は来ているんですが、キソクがまだ来てないんです。

ギョンミン : いつ来るんだ?

オソク : 今テアンに入ったそうなので...まだ30分は掛かるかと...

ギョンミン : (シナリオを確認する) それじゃ...5番シーンから撮る。準備させろ。

オソク : はい。(立ち上がって大きい声で) 5番シーンから撮ります。ミソン、ドンギュ、準備して下さい。セット確認して下さい。


#ヨンウンの仕事部屋

(ヨンウン、ソファ-に座って電話中。)

ヨンウン : 延長...?

ノPD : (電話越しの声) はい。局長が検討してみて欲しいという事です。

ヨンウン : (息を吸い込む).... (ため息) 何話ですか?

ノPD : ...2話だけ....

ヨンウン : 俳優は何と言っているんですか?

ノPD : まだ話していないんです。まずソ作家に承諾していただかないと ...

ヨンウン : 私が承諾しても俳優一人が承諾しなければ実現しない話でしょう?さんざん書いた挙句に無駄になったらどうしてくれるの?

ノPD : どこに承諾しない人がいるんですか?人気があるからこそ延長になるんだし。こんな機会はなかなかないじゃないですか。心配なさらないで下さい。全員に承諾してもらいますから。

ヨンウン : (ため息) ノ監督にはなかなかない機会でしょうけどね。私には毎度の事だから、そう嬉しくもないわよ。

ノPD : だからですよ。ソ作家と作業する事が、私にも俳優にもなかなかない機会じゃないですか。俳優たちがどうして嫌がるんですか?彼らがどうして?そうでしょう?

ヨンウン : いいかげんな事を言わないで、はっきりさせて下さい。とにかく俳優を先に口説いて下さい。私の結論はその後です。

ノPD : それでは俳優がOKすれば、ソ作家もOKですか?

ヨンウン : それはその時になったら話します。

ノPD : はい、分かりました。お疲れ様です。

(ヨンウン、電話を切って考える。ミジュ、ヨンウンの様子をうかがう。)

ミジュ : (近付いて) 先生....延ばさないとならないと?

ヨンウン : (ノートPCの電源を入れて) まだ分からないわ。

ミジュ : ....(小さい声で) イ監督は止めると思うけど...

ヨンウン : (たじろぐする).... イ監督には何も言わないで。

ミジュ : はい...(自分の机に戻る)


#安眠島、夜、海辺

ギョンミン : (電話中) 変わった事はない?

ヨンウン : うん.... 順調に行ってる?

(画面分割)

ギョンミン : ああ.... 俳優一人に手こずらされて、ちょっと引き延びたりはしたけど....

ヨンウン : 誰?どうして手こずらされたの?

ギョンミン : キソクが.... 次期作の撮影と重なって行ったり来たりするせいで...

ヨンウン : (ため息) ....それじゃ明日までに全部終える事は出来ない?

ギョンミン : 1シーンが滞ったりしてたから...明日になってみないと分からないな,..

ヨンウン : (ためらう)....

ギョンミン : まだ終わってないのか?今日も徹夜か?

ヨンウン : (やや苦い) それは...明日までに完成させないとならないから...

ギョンミン : (ため息) 心配だな...。食事は?

ヨンウン : (にっこりと笑う) またそれ?食べたわ。心配しないで。

ギョンミン : 本当に無理しないで、寝るようにしろ。病院からも気を付けろと言われてるんだから...

ヨンウン : 分かってるから。 あなたも気を付けてね。家に居もしないんだから...

ギョンミン : 俺は丈夫だから。(ため息) 切るよ。時間もないし...

ヨンウン : (名残惜しい) うん...おやすみ...

ギョンミン : (切ない)...おやすみ...

(ヨンウン、電話を切って気まずい表情)


#3日後、PD室

(ギョンミン、机に座って撮影スケジュールを確認する。ノPDが入って来る。)

ノPD : 行って来たのか?

ギョンミン : はい。...順調ですか?

ノPD : こっちはな。誰の作品だと思ってるんだ?多分延長になりそうなんだよ。

ギョンミン : (ぎくりとして振り返る) 何になるって?

ノPD : 延長。羨ましいか?... (ギョンミンを見て口をつぐむ) ...何だ?その顔は。何かいけない事でもあるのか?

ギョンミン : (表情固い) 確定したんですか?

ノPD : (様子をうかがう) まだ確定してはいないけど、ほとんど....

ギョンミン : 作家がするそうすると?

ノPD : しない理由がないだろ?1話当り2千なら当然...

ギョンミン : (息を吐き出す) ...だから...作家がすると言ってるんですか?

ノPD : (ちょっと恐れて) いや..まだ承諾したわけじゃないけど....。おい、お前は何が言いたいんだ?延長したらダメだという事なのか?

ギョンミン : (ため息)...(片手で顔を包む)......

ノPD : (後ろ向きに座る)....怖いヤツだな...


#夜、ヨンウンの仕事部屋

(ヨンウン、机で作業中。ギョンミン、食卓に腕組みをして座ってヨンウンを眺めている。)

ヨンウン : (作業しながら) 疲れてるなら先に寝て。 私はまだもう少しやらないと。

ギョンミン : .......

ヨンウン : (ぴたっと手を止める) .......(振り返る)...どうしたの?

ギョンミン : (黙ってヨンウンを見る).....

ヨンウン : (不安げに).....何か....?

ギョンミン : .....延長するって?

ヨンウン : (ドキッ!) いえ....まだOKしたわけじゃないから...

ギョンミン : まだ?

ヨンウン : (腰を伸ばしながら) まだ俳優たちの合意も得ていないし...私も考えてみないとならないと思うし...

ギョンミン : 何の考えだ?

ヨンウン : (ギョンミンを見る) ...時間もそうだし...あなたとも相談しなくちゃ...

ギョンミン : それなら言う。延長はするな。

ヨンウン : (ギョンミンをうかがう)......

ギョンミン : どうして返事をしないんだ?

ヨンウン : ........

ギョンミン : (目を細める)...延長したいのか?

ヨンウン : (うつむく).....

ギョンミン : (堪える) なぜなんだ?

ヨンウン : (深呼吸する) あと6話残ってるんだけど...まだ入れていない話が多いのよ。20話で終わらせると不完全にもなるし...

ギョンミン : 初めから 20話完結だったんじゃないのか?

ヨンウン : そうだけど...書いているうちに、入れたい話が色々出て来るし...

ギョンミン : (息を吐き出す) それを上手く按配してこそプロだろ?君は新人作家じゃなく9年次のベテランなのに、そんな事もちゃんと出来なくてどうするんだ?

ヨンウン : (むかっとする) そういう事言うの?だったら自分で書いてみなさいよ。

ギョンミン : 何を言ってるんだ?俺がどうして書くんだ?作家は君だろ?

ヨンウン : (プライドを傷付けられた) そんなふうに、子供を咎めるみたいに言わないで。あなたが言うとおり、私はプロよ。私なりに、延長も念頭に置いて書いたんだから..(しまった!)

ギョンミン : (頭に来た).... 要するに、既に延長を考えていたという事だな?

ヨンウン : (目を閉じる) .....

ギョンミン : (声が大きくなる) 今の君の状態がどんなふうだと思ってるんだ?病院から今すぐ入院させろと言われているのを、作品が終わるまで延ばしているんだぞ。だけど延長したらま更に一週持ち越されて...その時まで何もないと言い切れるのか?

ヨンウン : そうは言っても、必ず何かがあるわけじゃないわ。

ギョンミン : 何だって?それじゃ、何かあるまで待つという事か?

ヨンウン : (傷付いて) そういう話じゃないでしょ。

ギョンミン : (息を整える).... 明日電話して、出来ないと言え。

ヨンウン : ....(机の下を見る)

ギョンミン : .....

ヨンウン : .....

ギョンミン : 君が言わないなら俺が言う。

ヨンウン : (ギョンミンを眺める) これは私の仕事よ。どうして私の意思は無視するの?

ギョンミン : 今は仕事の話じゃない。俺は、今は君は仕事をするなと言ってるんだ。

ヨンウン : 結局それじゃないの。

ギョンミン : 何が結局それだ?これは君の健康問題だと... (息苦しい) そう区別出来ないのか?

ヨンウン : .......

ギョンミン : 言う事はないのか?

(ヨンウン、立ち上がって部屋に入って行く。ギョンミン、立ち上がって部屋のドアを叩く。))

ギョンミン : 開けろよ。締め出すな!

ヨンウン : (ベッドに座っている。冷淡な) .....(涙を溜める)....

ギョンミン : ヨンウナ!ソ・ヨンウン!

ヨンウン : ......(悔しい。涙が流れる)...

ギョンミン : (ドアを開けて入って来る。ヨンウンを見下ろす)....

ヨンウン : (唇を噛み、傷付いて声を出さずに泣く)....

ギョンミン : (心が痛い。ため息をつく) ...... 頼むから意地を張るな。...俺の話を聞け。

ヨンウン : (べそをかく) どうして...大声を出すの?心配だと言いながら...大声を出せば ...私が....言う事を聞くと思ってるの?...酷いわ...。

ギョンミン : (頭を下げてため息) .....(近付く) ごめん...(ヨンウンを抱いて) ごめん...大声を出してごめん....(ぎゅっと抱く)...ごめん...


#二日後、局長室

(机の前にギョンミンが立っている。カン局長、ギョンミンを見る。)

カン局長 : それで?延長が出来ない?

ギョンミン : はい。

カン局長 : (呆れて) イ・ギョンミン。これは仕事だぞ。妻の仕事に夫がいちいち干渉するのはおかしいと思わないか?

ギョンミン : 申し訳ありません。事情があるんです。

カン局長 : どんな事情だ?

ギョンミン : ...

カン局長 : おい、どんな事情だ?

ギョンミン : ソ・ヨンウン作家の体調が良くないんです。...入院させないとならないんです。

カン局長 : (驚く) そうなのか?どれくらい良くないんだ?

ギョンミン : 病院からは姙娠中毒症の危険があると...

カン局長 : それは危険だという事か?

ギョンミン : はい。

カン局長 : それじゃどうすれば...?

ギョンミン : とにかく入院して、病院で作業するしかないと思います。

カン局長 : (ため息).....(ギョンミンを見て冷淡に) どうしてこんな事に...(後ろ向きに座る) チクショー!

ギョンミン :.......


#病院入院室、夕方

(ヨンウン、ベッドに横になって寝ている。ギョンミン、ベッドの横で見守る。)

(真夜中)

(ヨンウン、目覚める。ギョンミン、椅子に座ったまま眠っている。)

ヨンウン : (ギョンミンの姿にじいんと熱くなる)....(布団をめくって起きる)...

ギョンミン : (気配に目覚める)...うん...起きたのか?どこに行くんだ?

ヨンウン : トイレ...

ギョンミン : 分かった。ちょっと待ってて。(点滴を整え、ヨンウンに靴を履かせてやる) 行こう。

ヨンウン : (ギョンミンの手がありがたい) .....

ギョンミン : (ヨンウンを見る) どうした?

ヨンウン : (ギョンミンを見る).....

ギョンミン : 何だよ。

ヨンウン : (ギョンミンの頬にキス) ありがとう....それと、ごめんね...

ギョンミン : (じいんと熱くなる)....ごめんだなんて...苦労させてるのは俺なのに...

ヨンウン : (微かに笑う) だから私...幸せなの...

ギョンミン : (怪しげな目)......

ヨンウン : あなたのためにする苦労だから....

ギョンミン : (胸がいっぱいになる)...今だけ苦労しよう...それでどんなヤツが出て来るか...

(ヨンウン、微かだが幸せなほほ笑み。ギョンミン、ヨンウンを見てじいんと熱くなる...)





(原作出処:sonkhj1116さんのブログ



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